記憶の攪乱

リンデン本。「つぎはぎだらけの脳と心」の続き。
ヒトの記憶はコンピュータのメモリーのようにはいかない。もっと柔軟であるというか「いいかげん」らしい。記憶を攪乱させる要素として混乱、暗示、書き換えの3つがあげられている。

混乱は、記憶の中に正しい部分とそうでない部分が混じってしまうエラーである。
確かにそのCMは記憶しているのだが、テレビで見たのをネットで見たとしまう混乱である。
混乱がひどくなるとCMは確かに見たが、競合ブランドのCMを見たと混乱してしまう場合もあり得る。

暗示は未就学児の児童虐待の事件で発見されたともいえる記憶の想起にかかわる重大なエラーで、カウンセラーや警察の誘導(暗示によって)殴られた、などの虐待の記憶を作りだしてしまい、あたかも体験したように「証言」するそうである。(えん罪が多発したらしい)
大人になれば、そういったことはなくなるが、インタビュー調査などではインタビュアーの巧みな誘導(暗示)でこれに近い現象があると考えた方がよさそうである。

書き換えは過去の記憶を現在の状況の依存して想起することである。
朝青龍が引退することは「わかっていた」などの発言はあちこちにある。
CM5本を見た記憶があるかどうか、1本ずつ見せて聞くのと、5本見せて「この中に見たものがあるか」と聞くのでは明らかに後者の認知率が高くなる。

我々が相手にしている消費者=対象者は、「悪気もなく、自然に、意識せずにウソをつくことがある。」という事実を知らないで、あるいは認めようとしないでリサーチに関わるのは危険である。