統計学より脳科学

「脳の可塑性と記憶」塚原仲晃(岩波現代文庫)を読んだ。
1987年の出版だから20年以上前の本で、解説でも「その後の脳科学の急速な発展」とあるが、読んでみて最先端の内容という印象しかない。
脳科学はそれなりにフォローしてきたつもりだったが、なんとなくモヤモヤしていた概念のいくつかがクリアに理解できただけでなく、本の記述が古いと思える部分がほとんどなかった。
専門家からみれば違うのだろうが、素人目にはわかりやすい最新の解説書であった。

67ページに「多くの脳機能、例えば認識、予測、思考、運動などの多くが記憶を基礎としているが、記憶のメカニズムがまだよくわからない。脳の謎にとって記憶はかなめの位置にあるのである」とあるように、また本のタイトルにある通り脳科学のエッセンスは記憶のメカニズムの解明であろう。
マーケティングリサーチのエッセンスも対象者の記憶を調査すること、と言っても大きな間違いではないだろう。
脳科学的にまだ解明されていないからといってリサーチできないということはないが、それくらいとらえどころのないものを調査していることを時々は思い出すべきではないだろうか。

どのようにブランドを認知し、どういうイメージを得て、消費という行動につながっていくかが消費者行動のプロセスでるなら、その基本は記憶であろう。
最近思うのはリサーチャーは統計学を勉強するより脳科学を勉強すべきなのかもしれないということである。