スローよりもファーストな意思決定をみがけ!

第15弾はかの有名なプロスペクト理論。『ココロの盲点』のなかでもこれだけが「理論」と標記され、効果とは違った深さを感じさせる。カーネマン・トベルスキーの『ファースト&スロー』は読んではいる。人(の脳)は冷静に落ち着いてスローな判断よりも感情に動かされたファーストな判断をする。得する時は確実性を、損する時は可能性に賭ける傾向があり、その傾向は金額の多寡によっても変化する。

消費者調査をしているとプロスペクト理論の現場によくぶつかる。清涼飲料と住宅の購入意思決定を比較すると、清涼飲料はファーストな意思決定で住宅はさすがにスローに検討し、決定までにいろいろな要素を比較検討すると考えるのが普通である。ところが、住宅の購入でもスローな検討をする前にファーストな意思決定はなされていて、それを納得させるためのスローな検討らしい。しかもコノファーストな意思決定の方がその後の満足度が高い。昔、マンションのインタビューで、ある主婦が、買い物帰りに駅前のモデルルームに何気なく寄って見て気に入って、仮予約し、その夜ダンナと相談して、翌朝手付金を持って行ったという体験を語った。もちろん、その後、いろいろ資料を取り寄せて夫婦で検討したが、最初の決断は間違っていなかったという結論だった。感情に大きく影響されるファーストな意思決定はあらゆる場面で有利なのかもしれない。理性に訴えるより、感情に訴えることが得意なマーケティングの得意分野である。バカにされるマンションポエムもなんらかの効果があるのかもしれない。