プロービングと尋問

インタビュー調査にはプロービングがつきものである。
この背景には、
 ・対象者の発言は常に不完全
 ・対象者は平気でウソをつく
という不信感がある。
これは悪いことではなく、有効なインタビュー結果を得るためには必要な態度である。
昨日のエントリーでも書いたようにインタビューは発話行為である。
発話は状況依存的であり、言語表現バイアスや同調圧力などの認知バイアスに満ちている。
そういったバイアスをできるだけ取り除いてあげて対象者のホンネ(この表現も問題だが)に近づこうというのがプロービングの目的である。
そのためには、対象者に「棲みこんで」対象者の視点から、不完全な発言の真意を気づかせる手助けという態度がモデレーターには必要である。

ところが、実際のモデレーションの中では「尋問か?」と思われるようなプロービングを見かけることがある。
尋問(警察)ももちろん、容疑者をトコトン疑っている(不信感)ので発言に対しては「ウソつくな!」という態度になるのは合理的として、モデレーターが同じ態度ではいけない。
発言には必ず「なぜ?」「どうして?」と理由を聞きなさい、と教育され、それをそのままプロービングに使うと尋問一歩手前となる。
優秀な尋問者にとっても容疑者の心理の中に「棲みこむ」ことは有効であろう。
モデレーターの「棲みこみ」との違いは、片や共感的な棲みこみなのに尋問は批判的な棲みこみといえるだろう。

あと、有効なプロービングのためには、
 ・プロファイリングに役立てる
 ・テーマに沿った内容
が重要である。
自己紹介のときにある主婦の対象者が「ダンナは毎晩、帰りが遅い」という発言に「何時ごろ?」「毎日ですか?」と聞くのが尋問的。
「起きて待ってるの?」「帰ってから夕飯は食べるの?」と聞くのがプロービングであろう。
ダンナの行動の実態把握ではなく、夫婦関係の予想から対象者のプロファイリングに役立たせられるし、その時のテーマが食品・飲料であれば分析に役立つデータが得られるのが後者の質問である。