ワーキングメモリーのマジカルナンバー(4人インタビューの根拠)

アクティブインタビューの研究をしている中で、FGI対象者の最適人数は4人であるとの結論を得たのだが、論理的な説明ができないで苦労していた。

ミラーの「マジカルナンバー7」は短期記憶の話だからFGIの人数の説明には使えないし、そもそも7±2では4という数字は出てこない。

それが、最近読んでいた本の中に答えがあってびっくりした。もちろん、アナロジー的解釈で少し強引だが、述べてみる。

本は、新曜社 社会脳シリーズの第3巻『注意をコントロールする脳』で、そのp54にある「視覚性ワーキングメモリーの容量的制約」の記述である。

<以下引用>

1997年の古い実験であるが、「異なった色のついた正方形が100ミリ秒提示され、900ミリ秒の遅延期間の後、再び同数の正方形が同位置に提示される。被験者はそのうち1つの正方形の色が変化したかどうかの判断を求められる。結果は、府意見者は刺激の数が4つくらいまではほぼ正確に答えられるのだが、それを越えると成績は急激に低下する。またこのパターンは色のみならず、さまざまなタイプの刺激で共通してみられる。従って、視覚性ワーキングメモリーの容量はほぼ4くらいであると考えられる」(Luck&Vogel 1997)

これは視覚に限定された実験結果だが、複数物体追跡という課題においても4つまではほぼ正確に追跡できるという結果が出ている。ワーキングメロリーにおけるマジカルナンバーは4である。

 

我々がモデレーションしている最中もこの複数物体追跡的な活動を強いられる。Aさんがインタビューによってどういう態度変容を起こしているか、B、C、Dさんはどうか、という認知活動をモデレーターは行っていることになる。

これを6人を相手にやることは不可能で、1人、2人は「この人はどうだったっけ?」ということになる。

それが4人なら何とかなると体験的に感じていたことが、このワーキングメモリーのマジカルナンバーによってある程度「科学的」に裏付けられたと考えていいだろう。

 

FGIの人数は5か6人の場合が多いだろうがモデレーター=分析者の立場からは、認知科学的にも4人が最適である。

4人インタビューを推進して行こう。