FGI対象者人数とマジカルナンバー

FGIの最適対象者人数を考える時、マジカルナンバーは非常に参考になる。心理学や脳科学の概念と考えてよい。ヒトが短期記憶で保持できる数のことで、1956年にミラーが7±2のマジカルナンバーを提唱した。ミラーは短期記憶はチャンク(かたまり)として記憶され、そのチャンクの数が5~9の範囲になると主張した。FGI中の対象者の発言をチャンクと考えれば、モデレーターや観察者が記憶(短期記憶)できる。人数の限度は5人~9人となり、FGIの対象者人数の歴史とある程度一致する。(対象者の発言全体をチャンクと考えるのは無理であるが)また、7は神秘数ともいわれることもあって±2の部分は忘れられてマジカルナンバー7が浸透したようだ。(七草、荒野の7人、7転び八起、西洋でもラッキーセブン、他)

その後、2001年にネルソン・コーワンが4±2こそがマジカルナンバーであると提唱した。コーワンも心理学者であり、観察や実験から4±2のマジカルナンバーを導出した。4という数字は7ほど神秘性はなさそうだが、日常生活では特徴的な数値である。例えば、グループインタビューをグルインと4文字で略称するし、4文字熟語であるし、合コンの最適人数は4☓4というネットのうわさもある。うちとけた楽しい飲み会の人数も4±1らしい。(5人以上は宴会になる)

 

複数物体追跡課題という脳科学の実験がある。この結果がマジカルナンバー4になっているので以下に引用する。

「視覚性ワーキングメモリーの容量的制約」

1997年の古い実験であるが、「異なった色のついた正方形が100ミリ秒提示され、900ミリ秒の遅延期間の後、再び同数の正方形が同位置に提示される。被験者はそのうち1つの正方形の色が変化したかどうかの判断を求められる。結果は、被験者は刺激の数が4つくらいまではほぼ正確に答えられるのだが、それを越えると成績は急激に低下する。またこのパターンは色のみならず、さまざまなタイプの刺激で共通してみられる。従って、視覚性ワーキングメモリーの容量はほぼ4くらいであると考えられる」(Luck&Vogel 1997)新曜社 社会脳シリーズ第3巻『注意をコントロールする脳』

心理学視点でも脳科学視点でもFGIの最適対象者人数は4人と結論できそうである。