ダメな男

グループインタビューでそのグループの雰囲気を作る速さと深さは圧倒的に女性の勝ちで男性は完全に負けている。
小学校高学年から60代くらいまでの年齢層で男は勝てない。
20年くらい前は中学生までくらいの間と社会人になりたての頃だけ男が勝つ時期があったが今や全敗である。
幼稚園児と70代以上は性差がない。

5から6人の初対面の人が集まってひとつのテーマで話しあう場面で、男性はだんまりを決め込んで相手を探るか、妙にはねあがってそのばの主導権を取ろうと権威的になるタイプに分かれる。
モデレーターがラポール作りに苦労することになる。
女性はほとんどの場合、放っておいてもすぐにうちとけて自然な会話の流れができる。
ラポールができすぎてテーマから外れた話題で盛り上がってこまることもあるが、一般的にはやりやすい。

この男女差はどうして発生するのか
・女性は普段からおしゃべりで男性は無口
・女は意味のない会話も楽しめるが男は論理的に話そうとする
などが考えられるが、では何故、おしゃべりを楽しむ女性、それが苦手な男性という区分ができたのだろう。

最近、進化生物学やエソロジーの本を読み散らかしていて「人類の歴史、生きてきた時間の99%以上は狩猟採集生活で定住農耕生活はたかだか1万年くらいである。だから、われわれの行動は狩猟採集生活のパターンが組み込まれている」という表現をよくみかける。
狩猟は男の仕事で採集は女の仕事という分業もどの民族(人種)でも一般的らしい。
女が狩猟で男が採集、あるいは混合というパターンを採用した部族は進化の過程で滅んだとも言える。
この狩猟採集の分業が遺伝子に組み込まれ21世紀になっても性差として現れるのではないだろうか。

狩猟はは集団で行われるが、各自は離れていて、離れた意思疎通に使う声は会話より合図としての声であったろう。更に、声もなく身振り手振りの合図のほうが獲物に気づかれる心配がない。
こうした行動パターンが遺伝子に組み込まれている男はおしゃべりが苦手になった。
一方、採集生活では木の実や根っこは人間が近づいても逃げないので声を抑える必要はない。
各自がバラバラで作業するより集まっておしゃべりしながらの方が作業効率が上がったし、子供の面倒をみるのにも有利だったと考えられる。
こうして人類120万年の進化がグループインタビューの現場にもあらわれる。

モデレーションをしながら進化生物学的解釈を考えるのは楽しい。