肌に合う

人間の五感は、目、鼻、耳、口(舌)、皮膚(肌)のそれぞれを感覚器官としています。
その中で「肌に合う」が最近テーマになり、そのことについて考えてみました。
まず、他の感覚器官で「肌に合う」と同じような表現をするか。
「口に合う」は食べ物と自分の嗜好が一致するという意味でよく使われる。
「耳に合う」は日本語として一般的ではない。
「鼻に合う」も使われない。
「目に合う」は、「ひどい目に合う」など感覚器官を体験全体のメタファーとして使う以外はない。

「肌を合わせる」という表現は、古い表現だが男女が同衾する(これも古い)意味があります。
「口を合わせる」はアリバイ工作として、正しくは口裏を合わせる。実際の行為としてはキス。
「耳を合わせる」はオーケストラの楽員にはあるかも知れないが一般性はない。
「鼻を合わせる」はイヌイットのあいさつ(行為)ぐらいか。
「目を合わせる」はあいさつ、愛憎表現として広い使われ方をしている。

「肌が合う」という表現は、男女のセックスの相性がいいという意味から人間関係一般に広がっている。(広がりは弱いが)
「口が合う」は理解できるが、「口に合う」と意味内容は同じ。
「耳が合う」はほとんど使われない。
「鼻が合う」は嗅覚の表現としてもない。
「目が合う」は偶然か意思的にかは別にして相手とのコンタクトが成立した意味で、「肌が合う」ような相性の意味までは含んでいない。

こうして考えると「肌」は皮膚感覚を越えて情緒や関係性までを表現できるコトバといえる。
さらに五感だけでなく、五臓六腑にしみわたる、骨身にしみる、など身体感覚をメタファーにした表現もある。