女性原理(母性原理)が支配するマーケティング

今、ポスト平成のマーケティングをテーマにして少数人数で研究し始めている。とりあえず、平成時代のマーケティングの特徴を検討している。平成時代は、戦後高度成長のピークとしてのバブルの崩壊直前に始まっている。平成元年には三菱地所がNYのロックフェラーセンターを買収したりしていた。このバブルはすぐに崩壊し、日本経済はゆっくりと坂を転げ落ちていく。最初は失われた10年とかで回復への期待はあったが、それが20年になり、最近は「低成長時代」が共通認識になり「復活」はあり得ない、期待できないとなっている。

全体市場は停滞感に包まれているが、マーケティング的には、ネットが生活の中に急激に入り込んできて、深く浸透したのが平成時代である。1995年は平成7年で、Win95はコンピュータがビジネスだけでなく、日常生活もターゲットにした年である。コンピュータはダウンサイジングと通信との融合(インターネット)で携帯電話からスマートフォンに進化してもはや機械ではなく道具・グッズになっている。B2Cマーケティングのターゲットの一般消費者は「検索」と「比較」の武器を手にした。メーカー側が秘匿できる情報は極めて少なくなり、意図せざるところで自社(製品)情報が流れ始め、時には大きなハブとなってネットワークをものすごい勢いで流れて行く。内容の好悪を確かめるチャンスはない。そして悪い話は良い話の3倍の伝達力をもつというネット以前からあった定説はネットでも適応できてしまい、マーケティングの4Pのひとつプロモーションは常に外部要因を考慮せざるを得なくなっている。メーカー側のコントロール力が制限され始めた平成時代。

インターネット化する消費生活とリアルな消費生活との齟齬も際立ってきた。ネット通販の利便性はヤマト運輸(の配達員)の犠牲によっていたということに気づき、比較サイトを見すぎるあまり購入ボタンをポチできない体験をし、SNSへの何気ない投稿が炎上したりで、ネットとリアルの折り合いをつける術を消費者はまだ会得できていない。テレビの「1対N」であれば大きなNの中に身を隠せた庶民が「N対N」のネットによって裸にされた状況である。これを乗り越える方法がわからないまま、AIの脅威も喧伝され不満や鬱屈を抱えた消費者も多い。

全体市場の停滞の原因のひとつとも言われる人口減少・少子高齢化を実感し始めたのが平成後期であろう。人口ボーナス・人口オーナスが原因と言われるが、どう考えてもそれだけでは説明つかないというか、それは結果に過ぎないのではないか。ここ1、2年は中国に完全に追い抜かれたとの認識も広がり、プライドを失ったり、プライドに固執したりの断片化が進んでいる。全体意識が鬱か双極性の症状を示している。

これらの原因なのか結果なのかわからないが「女性原理(母性原理)」の重視、支配が進んだのも平成マーケティングの特徴ではないか。女性原理や母性原理の表現は安易に使うと問題だが、フェミニズムとは離れて使いたい。戦後民主主義教育もこの流れの中にあったが、低成長・停滞が意識されるようになって際立ってきている。まだ分析不足だが、この女性原理が支配するマーケティングも考えて行きたい。(経済成長を遂げた社会は共通に女性原理マーケティングになると言えるかもしれない)