買物の快楽

買物は苦痛、義務と感じる場面と買物は楽しい、ストレス解消になると感じる場面がある。今夜の夕飯の材料を買うのはつまらない義務的買い物で、この冬のためにコートを選ぶのは楽しい買物であろう。ただ、このふたつの感覚はきっぱりと分かれることはなく、義務的買物の中にも「楽しさ」の要素は入り込むし、楽しいはずのコート選びもこの冬の寒さ対策、流行に後れたくないとの圧迫感が含まれるはずである。この快楽と義務の感覚のうち、快楽の感覚を刺激するのがマーケティングなのかもしれない。

先日のインタビューで、日常の買物、具体的にはスーパーで買うような商品の買物は楽しいのか、おっくうなのか、実店舗で買う場合とネット通販(ネットスーパーを含む)で買う場合での快楽度の違いについて話してもらった。義務的買物の中にも楽しさ要素を入れ込もうとする傾向はほぼ全員がもっていた。(どうせやらなくてはいけないのだから楽しく)そして、発見があったのだが、実店舗での買物の快楽の前提は日常的に複数のスーパーに行く、行ける環境に住んでいることが必要条件だった。単一店に毎回行くと商品棚や配置を覚えてしまうので新鮮さがない、店舗間の比較ができないので次第につまらなくなるそうだ。そういう人はネット通販に行く。

ネット通販はいろいろなサイトを訪れることができるので店舗(サイト)に飽きることはないが、買うブランドが決まった商品では、ダイレクトにそのブランドをめざして検索するので快楽要素は入り込みずらいそうだ。ネット通販での快楽度が高い商品ジャンルは、まだブランドサーチ状態(自分に合ったブランドを探している)である、購入頻度が低い、いろいろなタイプ種類がある、などの条件があがった。最寄り品ではあるが少し買い回り要素があるということである。そして、ネット通販の快楽度を上げてくれるのはランキング情報がシンプルでよく、リコメンドやユーザー評価のコメントは「よほどでないと見ない」とのことだった。ランキングは数字を見るだけで何を言いたいか理解できるが、文章や写真でのコメントは読まないし、読んでもわからない。ということだった。ECサイト検索中は、文章は読まない、ということである。読み始めるとブランドが決められなくなることが多い。連続的に認知的不協和が生まれる状態かもしれない。すると、最終的にはそのサイトから逃げ出すことになる。しかもこの傾向は公式サイトで発生しやすく、インスタなどの私的(パーソナル)なサイトでは発生率が低くなる。SNSでは、同じ消費者としての共感的態度が準備されているのだろう。