石本正

思わぬプレゼントがあった。
「石本正 自選画集」1994である。
丹下健三設計の大学の図書館の雑誌コーナーで、当時あった「みづゑ」という美術雑誌で観たのが石本正との最初の出会いだったと記憶する。
今回いただいた画集で「二人の舞子」が出会いの絵であったことがわかった。
当時は画家というものが個展とか同人展をやることすらよく知らない田舎出の学生だったし、銀座の画廊は入場料を取るものと思いこみ、全く足が向かなかった。
雑誌に時々取り上げられるの追っかけていただけだが、新聞の美術欄の「新作展」のお知らせが載って、たぶん銀座の画廊に出かけたのはサラリーマンになってからだいぶたってからだと記憶する。
その時は花の絵ばかりであった。ヌードを期待していって少しがっかりしたが、花の絵を何点も観ていくうちに石本正の画面の妖艶さが納得でき、新たに感動した記憶がある。

5、6年前だと思うが、銀座に小さな画廊を持っている友人がいてアポの帰りに顔をだした時、これまたちいさな書棚にこの画集を見つけて観ていたら、友人がいろいろ講釈してくれた。それは画壇での石本の評判で、銀座にには居られないようになって京都に行ったというような内容だったと思う。

子供の頃、男の子は誰しもヌードをポルノとしてしか見ない。自分も学校の美術の教科書にあったアングルの泉?などは露骨な裸としてしか見ていなかった。
そういった子供っぽさを払拭してくれたのが石本正の絵であったことは間違いなさそうである。
石本のヌードは体はもちろん、モデルの顔がすばらしくよいのである。
本人もいうように菩薩のカオだし、その中に西洋的な天使も潜むし、もちろん娼婦の要素もある。

絵を見て感動するという貴重な体験をさせてくれた画家である。