暗黙知、インサイト、エスノグラフィー

石井淳蔵「ビジネス・インサイト」(岩波新書)は、最近、エスノグラフィーについて自分なりに考えてモヤモヤしている状態にある見通しを与えてくれるよい本でした。20年ほど前にポランニーの「暗黙知の次元」を読んである種の感動を得て、10年前くらいにブランド認知に関して暗黙知を探るという調査プロジェクトを担当して以来、ポランニーも暗黙知も遠ざかっていました。その間、一橋の野中さん達が言う暗黙知(匠の伎、職人伎)になんとなく「違うんじゃない?」と違和感をもっていましたが、それがこの本で正しい違和感?であることがわかりました。

インサイト暗黙知の次元で理解できました。消費者インサイトを「消費者の背中を最後に一押しする要素」と考えていましたが、近接項の分析・理解から遠隔項を見通す力であると理解できてこれも少しすっきりしました。遠隔項は近接項の知識に依存する。近接項の意味は遠隔項の中に定位される。暗黙の認識は近接項と遠隔項の協力で構成される。近接項は遠隔項の中にのみ感知される。という定義も懐かしかった。

さらに対象に棲み込む方法論のひとつにエスノグラフィーがあるという連関が納得できてなんとか霧の晴れ間が見えた印象です。

aha!体験、ユリイカアフォーダンス、メタファーなどとの関連も考えて行きたい。

ビジネス・インサイト―創造の知とは何か (岩波新書)ビジネス・インサイト―創造の知とは何か (岩波新書)
(2009/04)
石井 淳蔵

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暗黙知の次元―言語から非言語へ暗黙知の次元―言語から非言語へ
(1980/01)
マイケル・ポラニー佐藤 敬三

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