パーケージデザインの機能

パッケージには中身(製品)の保存、保護、運搬しやすさ、などの実質的な機能が期待される一方で、マーケティング的には視認性、識別性、対競合優位性、表現性(製品ジャンルのデザインプロトコルとの整合性)などの機能が要求される。視認性と識別性は似た機能である。店頭の棚で一瞬のウチに「それだとわかる」必要があるし、他ブランドと「違う」とわかる必要がある。表現性の中は、製品(中身)を「正しく」連想させる機能とそれが、競合ブランドよりも自分の嗜好に合うことを納得させないといけない。すると当然、その商品ジャンルのデザインプロトコルに従う必要とそれに埋もれてしまわない個性が要求される。

リサーチでは、インパクト、わかりやすさ、共感性、競合差別性などの項目を全体のカラーリング、最も目立つカラー、最も強い線や図形、アイコン、ネーミングロゴデザインとキャッチコピーなどの文字表現に分解して調査し、最後に全体的な評価、つまり、そのブランドの「デザインアイデンティティは何か」をとるというプロセスで分析される。実際のデザインを提示して上記項目を質問していけば、パッケージデザインの調査はできる。

パッケージデザインの調査で既存ブランドのデザインのどの部分が識別性、差別性、共感性のそれぞれに寄与しているかがテーマ(目的)になることがある。この時、調査方法のひとつとしてパッケージの絵をフリーハンドで書かせる事がある。結果はほとんど人が何も描けない。当ブランドのヘビーユーザーで今日も買ったという人でも描けない。ブランド名をカタカナ・ひらがな・ローマ字で書き、全体のフォルム(輪郭)を自信なさげに描くだけである。これは一般的なことであるらしい。誰も千円札の絵は描けない。1000円という数値と人物が誰かということ富士山の絵があった程度である。しかし、実際の支払いで千円札と五千円札を間違えることはない。(老人は間違える?)お札のデザインは識別性だけでなく偽造防止目的で複雑にデザインされていることも影響しているだろうが、シンプルなデザインの日常品でも絵は描けない。

では日常的に何を頼りにして識別して選択しているのか。コンビニの棚から競合品ではなく自分のブランドを選ぶ時、じっくりパッケージを見ている人はいない。ほぼ、自動的といえるタイミングで選んでいる。「どうやってとっているのですか?」とその場で質問しても「いつもそうしてる」以外の答えはなく、「パッケージデザインのどの部分に注目しているか」と聞いてもネーミングしか出てこない。実際のパッケージを見せて「どこで識別している?」と聞いてもネーミング以外は上がってこない。パッケージデザインの調査ではあれだけ詳しかった人が、ほぼ盲目状態になってしまう。

商品選択にパッケージデザインは何も貢献していないわけはないわけで、仮説的にはそれぞれのブランドのパッケージデザインの「暗黙知」的認知が働いていると考えられる。この暗黙知を探るのが今回のセミナーのテーマです。

 

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