ニューロマーケティングはとっくに終わっている

第30弾は「自由意志錯覚」これを初めて知った時は結構なショックを受けた。大げさに言うとアイデンティティの危機。リベットの実験で有名だが、ヒトが何かをしようと思う前から脳は準備電位といって活動を始めている。意志が先にあって、その意志に従って必要な脳活動が始まると考えたいが、脳活動が先でその後に「しよう」という意志が現れる。「自由意志は幻想」にすぎない。何か腑に落ちないが、池谷先生は「無からは何も生まれない」とし、「しよう」という意志が生まれる前をたどっていけば、何らかの(脳)活動が必要になる、のだから当然のことであると解説している。そして「ヒトという生き物は、自分のことを自分では決して知りえない作りになっているようです」と結論している。『ココロの盲点』の掉尾をかざる哲学的なご託宣である。

MRの現場でこの自由意志問題が関わるようなことはまずない。無理やりつなげれば、ニューロマーケティングと言われる分野で、コトバや行動で「回答」させるの従来の方法ではなく、脳活動を測定することでバイアスのないリサーチができるとのアプローチである。消費者のブランド決定時の意志のありようや広告や商品の評価をコトバを介することなく直接、脳活動の測定で行なおうとの考え方である。この考え方は原理的に不可能と考えてよさそうでさる。