「少数の法則」はリサーチャーの宿命

『ココロの盲点』シリーズ第12弾は 「少数の法則」。少数の法則だけでは何なのかさっぱり見当がつきません。本では、ハトにブザーが鳴ったときにレバーを押せば餌が出る訓練を充分に行い、「ブザー → レバーを押す → 餌にありつける」との学習が成立したところで、ブザーもレバーも関係ない時に突然、餌をだすと、ハトは奇妙なダンスするそうです。(実験結果もある)餌が出る因果関係は理解(体に染み込んだ)していたはずなのに何故、今、餌が出たかの因果関係はわからない。そこで、餌が出た瞬間の体の動きを繰り返すのだそうです。脳はどんなことにも法則化したがるクセがあり、数少ない成功体験から定式化された「儀式(ハトのダンス)」を生みます。これがゲンかつぎ、迷信、などが生まれる原因です。これに確証バイアス(第2弾)が加われば「信念」になります。そして、こういった慣例はなかなか消えず、それを消去抵抗が大きいと言うそうです。

少数の法則といえるかどうか自信はありませんが、トレンド調査で、特定のデータの対前年比が大きく動いた時、データの精度をチェックする前にその動きの理由を考え始めてしまうのがリサーチャーではないでしょうか。その動きに対してある仮説があてはまりそうだと一層、データの解釈(因果関係の推定)に突き進みます。同時にデータチェックをやれば問題ないのですが、時間がなかったり(納期)、解釈が面白すぎるとチェックが甘くなってとんでもない失敗につながることがあります。因果関係を考えたがる脳のクセはリサーチャーで著しいのかもしれません。

もとよりサンプルサイズの小さい定性調査では、少数の発言から膨大なストーリーを作ってしまいます。このストーリーづくりが分析者の能力と言っても過言ではありません。「行動がまずあって、あとからその理由を考えるのがヒトの行動パターン」が事実であれば、インタビューの対象者も偉大なストーリーテラーなわけで、それも元に分析するのは物語を物語で表現することになります。そこにはデータの精度という考えは入り込めません。

少数の法則の実体験としてかつて「日曜日の夜の個性的な人々」http://blog.hatena.ne.jp/auraebisu/auraebisu.hatenablog.com/edit?entry=8454420450094595545

という記事をアップしました。これは典型的な少数の法則で、我々の周りはこれが溢れているようです。