常套手段の情報フレーミング

池谷裕二先生の『ココロの盲点』ネタの第4弾。今回の「情報フレーミング」はマーケティングの世界では常に活用されている認知バイアスと言える。

池谷先生の事例は、ダイエット進行中の人が肉を買いに来た時、「赤身75%」「脂身25%」の2つの表示ではどちらを選択するか。という問いかけで、当然、「赤身75%」が選択される。全く同じ内容の肉が表現の違い(フレーミングの違い)で選ばれやすくなる。追い打ちをかけるように、我々がよく体験する「もう、今年も半年過ぎてしまう」と焦る5月末と「今年もまだ半年以上残っている」と余裕をかませる5月末の違いも情報フレーミングであると例に挙げている。

この情報フレーミングの使い方は、マーケティング、特にコミュニケーション関連の優劣を決めるポイントである。ターゲットの心理状態や嗜好に合うように情報をフレーミングしてあげることで同じ商品・ブランドのイメージが大きく向上する。マーケターは情報フレーミングという認知バイアスを利用している意識はなく、表現のアヤのように考えている。

MRの報告書で認知者40%、非認知者60%との集計結果が出た時、「すでに40%もの認知率を獲得している」とコメントするか、「まだ、40%しか認知率がない」とコメントするかで報告書の雰囲気が大きく変わる。非認知者の60%の数値も「まだ、開拓余地が大きい」とコメントした方が積極的な報告書になる。(もちろん、状況によりけり)

情報フレーミングと少し違うが、現場で数字を出すか出さないかで悩む場面がある。例えば、ある商品で減塩を訴求しようとしたとき、ただ「減塩」と表記するか「20%減塩」と表記するかで、どちらが効果的かということである。100%か0%であればたいした問題にならない。少し前までノンアルビールが、アルコール分0.2%、現場0.1%などと競っていたが、今は0%で落ち着いている。減塩の場合、100%塩分を抜くと商品として成立しないので減塩率を数値で評価すかどうかが大きな問題になる。インスタント味噌汁など半分(50%)も塩分を抜くと、味はみそ汁ではなくなるらしい。10%抜くだけでも味とのバランスが大変らしく、今のところ数字を出さずに「減塩」訴求している商品が多いようである。