確証バイアスとマーケティング

池谷裕二先生の『ココロの盲点』をネタにマーケティングリサーチを語る第2弾。今回は、最もよく話題になるのではないかと思っている「確証バイアス」 池谷先生は、我々の脳は、「自分の仮説や信念」に一致する例を重要視する傾向があると、確証バイアスを説明している。

確証バイアスはマーケティングリサーチに限らず世の中にあふれている。このバイアス抜きの認知を得るには全てに統計学的検証が必要になる。統計学から一番遠いのが我々が生活する社会である。

まず、リサーチを企画するマーケターにもこの確証バイアスがある。「キャンペーンは売上数を増やす」との認知はキャンペーンをやるたびに強化されるかというとそんなことはなく、売り上げ増に貢献しないキャンペーンもある。しかし、担当者はそういった結果は無視し、効果的なキャンペーンだけに注目する。この確証バイアスに意識的にならないとマーケティング施策の革新は生まれず、マンネリ化する。

池谷先生は、「雨男(女)、晴れ女(男)」や血液型性格を確証バイアスに挙げているが、我々がリサーチでよく使う「対象者特性」の多くも確証バイアスかもしれない。高感度層(人間)、イノベーター度、インフルエンサーなどは、いくつかの質問への反応数などで指標化するのでバイアスは少ないだろうが、自動車に関しては高感度だが住宅については関心なし、というようなことは頻繁にある。なのに一度高感度人間と分類すると他の分野でも高感度としてしまい、「やっぱりね」という情報にしかアクセスしなくなる。

インタビューの対象者の確証バイアスはたくさんある。いっとき、FGIの自己紹介で「自分は他の人からどんな人と言われているか」を発言させたところ、5人のうち3人が「よく天然と言われる」との回答だった。3人も天然\がいたらグループインタビューは難しい(あるいは簡単すぎる)と思い、「どうしてそういわれる?」と質問を返したら直近での友人、家族との会話で説明された。(今朝も娘に言われた)

この程度ならかわいい(テーマに関係ない)ものだが、あるブランドの購買理由が価格(安いから)であった場合など、対象者は直近の買い物時の価格ではなく、体験した「最安値」の発言をする。このブランドはいつも安いという認知が仮説よりも信念になってしまって「安かった」情報だけにアクセスするようになったのであろう。ただ、価格のように数値表現できるものは確証バイアスは比較的簡単になくなるが、健康食品、サプリメントの「効く」「○○にいい」は確証バイアスそのものである。「効く、いい」との信念を先に作って(認知させて)しまえば、効果があったような気がした時だけアクセスするので、ラクな商売ができる。

マーケティングは確証バイアスを強化する戦略を取った方がよいのか。ほんとうか。