消費者(調査対象者)の3つのアポリア

われわれのモデレーション・分析は、以下の前提に基づいている。

f:id:auraebisu:20170315102747p:plain

モノやサービスを買ったり、使ったりするとき、消費者は自分の行動や感情に「意識的」でない(気づいていない)のが普通なので、ブランド選択理由を聞かれても答えられない。(そんなこと聞かれてもネー)

たとえ、意識できたとしてもうまく表現できない(ウーン、なんと言ったらいいか、ホラ、アレだよ)今までにない画期的な気づきであればあるほど表現するぴったりのコトバがない。マーケターはこれこそが知りたいのにである。

ここで、「こんなこと言ったら恥ずかしい、バカにされそう」との感情が働くと、表現内容が世間のステレオタイプに迎合しやすくなったり、適当なウソをつく場面が多くなる。

この3つのアポリアは専門家のB2Bインタビューではほとんどない。

例えばドクターに薬剤の選択の理由をインタビューするとき、自分の選択に意識的だし、選択理由も的確に表現できるし、プロとしての自負があるので合理化やウソをつく必要はない。(ステレオタイプはあるが)

しかし、同じドクターに好きなビール銘柄のインタビューをすれば、一般消費者と同じアポリアを抱えることがわかる。

仕事(生産活動)は意識的で、共通の表現があり、場の空気を考える必要がないのに生活(消費行動)は無意識、表現の必要がない、個人的なものなのである。

モデレーターの技量はこのアポリアを超えることで、その方法としてプロービングがあるが、前の記事のように心理学的よりもマーケティング的プロービングの有効性を最近は探っている。