選択盲

池谷裕二『ココロの盲点』p68〜p71に変化盲と選択盲が取り上げられている。

インタビュー調査で問題にすべきは選択盲であろう。
変化盲は単なる「錯覚」でよいが、変化盲は分析結果にしばしば影響を与える。
例えば、コンセプトPQの一対比較のインタビューで、PよりQを評価した対象者にQの良い点をいろいろ挙げてもらって評価基準を明らかにしていくのはよい。
ここで、評価は低いが「それでもPの良い点は何かありますか?」と質問するとPのよい点が山のように上がってくるということがある。
「でも、〇〇さんはQの方が気に入っているんですよね」とプローブすると「キョトン!」されることがある。
対象者というかヒトは、提示された対象(コンセプトPQ)に関してコメントする時、自分の好悪から離れて、対象から想定できる固有の「物語」を作り上げるのである。(いわゆる作話)
その場面では、「PよりQを選択した」という本人の行為は忘れられている。

このことに留意せず、対象者は、対象物に関して「客観的に語っている」と思って分析するのは危険である。
選択場面と選択理由を語る場面は分離しているし、選択理由は物語として語られるのである。
対象者の選択か選択理由のいずれかを疑うか、両方を疑う必要がある。