「対象者は見た」これからのマーケティングリサーチ

つらつら考えているうちに「調査対象者から見た」マーケティングリサーチの変遷と将来、という視点があるとひらめいた。
で、つぎの3つの時代に分けてみた。
?サンプルの時代
?モニターの時代
?複雑系の時代
である。
サンプルの時代はすでに過去となり、今は、モニターの時代が全盛であるが、複雑系の時代の足音が聞こえてきたというところであろう。(ネーミングが気がきいていないのは承知)

サンプルの時代は文字通り対象者はパントリーチェックのために選ばれるネジ(浅野先生のたとえ)と同じであり、そのロット(母集団)のなかのどのネジも選ばれる確率は同じである。
という信仰に近い考えがあって厳格に守られた。
選ばれたサンプルは細かく計測され、ロット全体の不良率(良品率)が計算される。
人間相手の市場調査なら、質問(計測器)に対して回答(計測)するネジとしてサンプルを扱うということになっていた。
サンプル(調査対象)はほぼ100%受動的で、選ばれて初めて自分がサンプルであることを知り、抵抗できるとすると「調査拒否」くらいしかなかった専制制度である。。

対象者にとってのこのファシズムは長く続いたが、インターネットの登場と普及のお陰で支配者そのものがいなくなるという幸運に恵まれた。
調査ファシストたちは次にサンプルのなかから「モニター」という名前を使って「囲い込み」を始めた。(もちろん、ナチスの収容所とは似ても似つかない)
モニターはサンプルと違って能動的である。
自ら「計測されたい」ともうし出ているので、サンプルの時代の苦労「回収率」の悩みは解消された。
当初は精確な良品率(不良品率)が計測できないとのクレームがあったが、出荷してみたらクライアントからのクレームはほとんどゼロで、今やこの方法が主流である。

このモニターの時代が続くと思われたが、モニターの時代を到来させたインターネットがさらに強力になったお陰でモニターの時代も終わるかもしれないという皮肉な現象が起こった。
この「複雑系の時代」の対象者はサンプル、モニターとして固定、特定できないのである。
こちらから働きかけることも難しく、相手が勝手に動いて、勝手に情報(質問→回答ではない)を上げてきてくれるのである。
こちら(調査主体)はそれらを取捨選択しているより「全部ぶち込んで、ブン回せば良い」ということで、それを可能にするコンピューターパワーも記憶装置をてに入れていた。
これはこれでめでたいことなのだが、気がついたらマーケティングリサーチという仕事への「死刑宣言」なのではないかと怯えるハメになってしまった。
この時代は「対象者」という名称も消えていくと思われる。

てなことを9日のセミナーでも取り上げる予定。