ボトムアップ注意とトップダウン注意

BLUE BACKS『人はなぜだまされるのか』を読んでいて表題の注意の違いがあることを知りました。
ちょうどアイトラッキング調査のことを考えていました。
何を考えていたかというと、
ラッキングデータでは視線がそこに集中しているのにインタビューすると「見ていない」「何を見ていたかわからない」という時の脳活動はどうなっているかということです。

ボトムアップ注意とは「視野のなかに違うものが入ってきたときに働く注意」
トップダウン注意とは「違いを探すという意識的な注意を働かせること」
といえます。(正確には違いますがアイトラッキングに引き寄せて書いています)
例えば、画面のなかにタテの棒がたくさんある中にヨコ棒が1本混じれば、そこに視線を動かし(注意)て「こいつは違う」と認識します。これがボトムアップ注意です。
画面に白と黒の棒がたくさんあって白はタテヨコ入り交じっていて黒はヨコ棒だけという中に黒のタテ棒が1本だけある画面では「違いを探す」という脳からの命令がないと「こいつは違う」ということが認識できません。
だから、ボトムアップ注意(違いを認識)は早いのにトップダウンは時間が掛かります。
(詳しくは前掲書p52の図を参照)
前掲書ではこれを進化心理学的に説明し、ボトムアップは草原で生き残るための進化圧であるとし、トップダウンは集団で生きるための(意識をもつ)進化圧で説明しています。

そして、ググってみたらこの記事がありました。
http://www.brain.riken.jp/bsi-news/bsinews33/no33/special.html
ここでの驚きは、視線が動く前にニューロンが違いを「認知」しているということでした。
(当たり前と言えば当たり前ですが)
「違いがある」とわかったから脳は眼球に対して運動せよ(視線を集中しろ)という信号を送るわけです。
そしてボトムアップのときは眼球が動くはるか前(180ms)にLIPが違いを発見しているのにトップダウンのときは眼球が動く直前に(50ms)LIPが発火し、しかもその情報は高次のPFCやFEFの発火からやってくるということのようです。

以上から、アイトラッキングで「見た」という認識のないヒートマップはボトムアップの注意によって眼球が動いたのではないかという仮説を出してみました。
記事を読むとそれほど単純ではないことがわかりますが、何か「使えそう」な気がします。