アナログアイトラッキング

次回のアウラセミナーではアイトラッキングを取り上げる予定、ということで読んだ古賀一男『知覚の正体』河出ブックス。
眼球運動一筋に研究したロシアのヤーバス(初めて聞いた)が60年も前に『眼球運動と視覚』という本を出版していた。
現在のアイトラッキングと同じことで、被験者の眼球運動の軌跡をそれを見ていた図版の上にスーパーインポーズして視線の集中度を観察した。
結果は輪郭や鋭角的に飛び出した部分、特徴的な部分に視線は集中していた。

ここまではよい。
だが、眼球運動の軌跡とヒトの思考過程や認識に至るプロセスが必ずしも一致しないことがはっきりしてきた。
簡単には、似たような2枚の図の数箇所の間違い探しのゲームで、いくら視線が集中していてもそこが間違っているか、同じか判断できないということが誰にでも起こることである。
同じか違うか「知覚」できない「認知」できないけど感覚器官の動きはそこに集中している。
アイトラッキングはこの感覚器官の動きを正確にトレースするだけで中枢が関与する知覚や認知は必ずしもトレースしていないということである。

だから、アイトラッキングが使えないということではない。
当該テーマのアイトラッキングデータと被験者の知覚と認知のインタビュー結果とを付き合わせて分析すれば、有効な知見が得られるとうことである。

我々のアイトラッキングは視線(眼球)の動きを測定せずに知覚というか認知の部分を測定する知覚トラッキング、認知トラッキングといえるかもしれない。
このときのインタビューのテクニックは知覚、認知から無意識の眼球運動を想定してもらうことだが、もちろん、確立された方法論はない。
事例を積み上げていきたい。