「つながり」のないリサーチ

年寄りの繰言ではあるが、最近、ネットリサーチをよく利用する機会があって、改めて実感した対象者との「つながり」を失ったマーケティングリサーチという事実。
善悪とか好き嫌いとか正邪とかは関係なく、この事実を実感した場面は、ある調査が対象者の過去の行動を詳しく聞くので、しかもOAなので、記入状況をみて「フィードバックしたい」と各社に打診したところ、どこも「できない」との返事が帰ってきたとき。
Webは従来のマスメディアと違ってインタラクティブ性に優れたメディアではあるが、ネットリサーチはその「つながり」を活用しないと宣言しているということ。
対象者は何十万もいるんだし、サンプリング理論は関係ないのだから、1回質問文を投げて、帰ってきた有効票だけを数えて設定数に達したら止めれば言いわけで、不完全票をフィードバック(エディティング)して完全票にするという発想すらない。
経済合理性にかなった考え、行動ではある。

ここから繰言。
昔、きちんとサンプリングした訪問面接では対象者は一種絶対的であった。拒否されても「最低2回は再訪問」「留守なら調査期間中は会えるまで何度も訪問」「近所の家にいつ帰るか聞く」(ここで近所の家が対象世帯とほとんど同じでもそこを対象としてはいけない=やれば不正行為)などの掟があったものだ。
回収した原票(これは死語らしい)に記入モレや論理チェックでおかしな部分があれば、再訪問か最悪電話確認をこうやって1票でも完全票を増やす(回収率を上げる)のがフィールド担当の至上目的だった。
厳しかった。
ただ、これをやると、対象者とリサーチャーの間に調査員を介した一種の信頼関係が生まれ、最初はいい加減だった回答が真剣になって行くという体験が何回かあった。
「お宅も夜遅くまで大変ネ」などと対象者からねぎらわれこともあった。
もちろん、「しつこい!うるさい!」と怒鳴られもしたが。

リサーチがリサーチャーと対象者との「協同作業(つながり)」であった牧歌的時代のハナシ。