イソビスタ

ある空間での居心地はイソビスタで決まるそうだ。「イマココ」コリン・エラード早川書房
それほど広いわけでもない家でも自分の気に入った落ち着ける場所があるものだ。勉強部屋の机よりも居間の大きなテーブルの片隅の方が好きな子供、わざわざ、人が出入りする入り口付近に座り込んでいた祖母なども何故かわからないがその空間が好きで安心できたのではないだろうか。
この気に入った場所からの眺め(可視領域)のことをイソビスタというらしい。家という「閉じた境界」の中から見渡せる「開いた境界」、可視領域のことである。(わかりずらい)
人間は視界(view)と見晴らし(vista)と全景(scene)を用いて非常に効率よく空間を分析できる。
ひとめで空間の大きさや形態を理解し、形態の中の不規則性、複雑性、対象性を一挙に理解して自分の好みのイソビスタかどうかの判断ができるらしい。
このイソビスタを演出して自分の家を高く売る「フラフィング」という不動産業の手法が米国にはあるそうだ。

ここでグループインタビュールームのイソビスタを考える。
時々言われることだが、無機質な空間であるインタビュールームに生活者を詰め込んで質問攻めにすることが正しい消費者理解を得る方法か?という疑問がある。
その対策として、一般的には丸テーブルを取っ払ってソファーを絨毯の上に置き、低いサイドテーブルの上に飲み物を置く、フロアスタンドも入れて、壁には複製の絵画、カーテンも暖色系の落ち着いたものにする、という方法が取られるようだ。

これで対象者が落ち着いてインタビューに入れるのだろうか?
マンションのモデルルームのリビングを作ってもおそらく無駄な努力だろう。
理想のインタビュールームには、このイソビスタの考えを持ち込んだほうがよい。イソビスタは素材(ソファーやテーブル)ではなく空間の切り取り方だ。
インタビュールームの視界(view)と見晴らし(vista)と全景(scene)を各席から分析して素材の最適な配置を考えればよい。そして、できれば、座席は対象者に自由に選んでもらうのがよい。
さらに、インタビューが終わったら、一人ひとりのイソビスタを追体験しながらモデレーターは分析に入るのがいい。対象者の席に座ってみて、ある発言がどういったイソビスタの中で発せられたのかを考えるのだ。

現実にはムリな話だが。