抑制こそが社会性の根本

直井さんの本シリーズ。

サルの関係性の実験(それを多次元生体情報記録手法=MDRで記録)から下位と認識した弱いサルが自分の行動を抑制すること、そのことを上位の(強い)サルに伝える(非言語メッセージ)ことが社会性の発生の根本であると主張しています。

サルは個体同士で上下関係が決まり、それは一定期間継続する。
始めてであった2ひきは激しく威嚇し合い、どちらかが勝つと(上下が決まる)エサ争いで負けた方はそこにエサがないように振る舞う。これはあらゆる個体同士の組み合わせで決まるらしい。

上下関係が決まった2ひきのサルも競合関係にない位置関係のときは前頭前野の脳活動のベースラインは同じだが、競合関係の位置(向かい合ってエサの取り合い)になると上位のサルのベースラインは上がり、下位のサルは下がる。

さらに2ひき(2ひきとも右利き)の位置関係で下位のサルの右手が上位のサルの左手側になるように机の角の隣り同士の位置にすると頭頂葉のベースラインに同様の変化が起こるのに上位のサルの右手が下位のサルの左手になる一度どりでは頭頂葉のベースラインは規則的に反動しない。(右利きの下位のサルも右手が使えれば上位のスキを盗んでエサを取る)
ここから、頭頂葉は相手がライバルとして現れたときだけ「他者」として認識するのではという結論になります。
(上位が右利き有利の位置にいると完全に勝てるのでライバル意識=存在しない)

また、サルの道具使用(訓練)の脳活動記録から道具の使い方に熟練してくると、道具を使った時、前頭葉の体性感覚刺激が発火することから、ヒトの高度な知性が頭頂葉の身体イメージの拡張と結び付く。(入来チームの見解)
これは道具を自分のからだの一部(延長)と知覚した(暗黙知の次元)といえるのかもしれない。
(正しくは身体と身体イメージの分離)

以上から、社会性の始まりは下位の者がエサが欲しいという欲求を抑制することが根本であり、それは頭頂葉の進化によるものである。
(社会性がサルより進展しているヒト社会にある協調行動は、サルの世界には認められないそうです。)