「脳科学の真実」

創刊された河出ブックス。坂井克之さんという「認知神経科学」という分野を研究されている方の本です。その中でニューロマーケティングへの批判が展開されています。最もこの人は脳科学の安易な使い方全てに疑問を呈しているのでマーケティングだけがやり玉にあがっているのではありません。
有名なコークとペプシのfMRIを使った実験。
コークというブランドへの好感情(海馬の活動)が味覚を司る脳の部分の活動(味覚ではペプシがおいしい)を押さえ込んでしまった。
これに対して、
ブランドイメージが味覚評価に影響するという既知の事実を脳活動で説明しただけ。
だから、
脳活動からは消費行動を予測することはできない。(=使えない)

米国の「ブライトハウス脳戦略グループ」「ニューロフォーカス」というニューロマーケティング会社も成功しているとは言えない。
それは、
消費者に対する倫理的な問題(我々は脳に直接インタビューしているという宣言への反発)
脳科学はマーケティングに応用できるほど脳を解明していない。

ダイムラークライスラーの実験。いろいろなクルマのデザイン画をみせたらポルシェのようなスポーツタイプを見たときに脳の報酬系(大脳基底底部、前頭葉底部など)が大きく活動した。
この実験も既知の事を追認しただけ。(EVやハイブリッドはまだ注目されていない時期)

坂井さんだけでなく多くの脳科学者はマーケティングという「複雑系」に脳科学の知見を応用することは早すぎるだけでなく、そう簡単なことではないと主張しています。
でも、ニューロマーケティングと宣言するだけである程度お金は集まりそうです。