暗黙知と棲みこむ力

昔の上司は「アメ玉ひとつ売った経験もない学者先生に経営のことがわかる訳がない。」とよく学者さんをののしっていました。「はぁ、そんなもんだろうな。」と漠然と同意していたのですが石井淳蔵先生の「ビジネス・インサイト」の序章に「なるほど」と思わせる文章がありました。

私も含めて多くの(経営)学者は、自分の所説が経営の実務に直接的にすぐに役立つとは思っていないというのが正直なところである。よしにつけ悪しきにつけ、学者のクライアントは実務家ではなく学者なのである。クライアントが実務家だという人は、コンサルタントであって学者ではない。学者でない人には信じられないかもしれないが、そうした存在として学者は社会においてその存在が許されているのだと思う。

こう述べた後、そういった学者の所説を実際の経営上のインサイトに結びつけられるのは、経営者の「暗黙に認識する力」とそれを育む「対象に棲み込む力」である。と締めている。

これは正しい認識だと思います。(おこがましいが)
逆から考えれば、ある情報(調査レポート、所説)をインサイトに結びつけられるのは受け取る側の暗黙知と対象に切り込む力だと思う。
学者の所説に限らず、表現されたことがそのままインサイトになることはマレにしかないということである。