日本人の脳に主語はいらない

日本語衰退論、日本語固有論とも違う脳科学からの言語と思考の話。最近読んだ「ミラーニューロンの発見」と連動させてみると大きな理解が得られる。ヒトはイメージするときに体を動かしているという発見は具体的にはミラーニューロンが発火することであろう。著者の月本さんはこれを「仮想的身体運動」と名付けている。
この仮想的身体運動はイメージからメタファーの生成、つまりは言語獲得、他者理解、自己認識にまで拡張される。

自己意識は言語野がある左脳ではなく右脳にあり、母音を日本人は左脳で聞く(発火する)のに西洋人は右脳で聞くという最近の脳科学の実験結果を示す。さらに発声系と聴覚系が連動していて、
日本人は発話開始時(この時点で自己意識はある)に左脳の聴覚野が活性化し、連続してその隣りの言語野が活性化するのでそのまま言語活動に入れる。
西洋人は右脳の聴覚野が活性化した後数十ミリ秒遅れて左脳の言語野が活性化する。このわずかなタイムラグが、認知的な私の後に言語的表現を続けることを阻害する。
だから、日本人は改めて声に出して「私」という必要はないのに西欧人は言語的「私」を発話する。

日本語  認知的主体「私」(無音)+言語的動詞  自他の分離が具体的で社会的
英語   認知的主体「I」+言語的動詞        自他の分離が抽象的で非社会的

日本語は主語非強要言語
英語は主語強要言語

脳科学的日本語論(本の主題は違うが)として非常に興味深い。日本語は非論理的だ、いやいや日本語こそ論理的だという論争は無意味。