椅りかからず
もはや
できあいの思想には倚りかかりたくない
もはや
できあいの宗教には倚りかかりたくない
もはや
できあいの学問には倚りかかりたくない
もはや
いかなる権威にも倚りかかりたくない
ながく生きて
心底学んだのはそれぐらい
じぶんの耳目
じぶんの二本足のみで立っていて
なに不都合のことやある
倚りかかるとすれば
それは
椅子の背もたれだけ
茨木のり子さんの詩です。
「自分の耳目、自分の二本足のみで立っていて、なに不都合のことやある」
おっしゃるとおり、何の不都合もござんせん。
ただ、それが難しい、自分の見聞したことだけを糧に自分の二本足を大地に立てるのが。
どうしても他人の評価が気になって仕方ない、この歳になっても。
この不況がいいチャンスかもしれない、自分の二本足のみで立つことのための。
金子光晴にもありました。
一番こころやすらぐのは、背もたれを倒して椅子を二本足にしてバランスを取りながら考え事をするときだと。
安定を求めないことが安定の秘訣、「赤の女王」のように止まっているために走り続ける。