ブランディングとサイズ感とドロリッチ

ドロリッチが終売になるらしい。いっときは年間100億を突破したブランドだし、10年間続いたのだからヒット商品と言って間違いない。Twitterでは、容量を減らしたのが原因と指摘する人が多い。内容量はブランディングにとって重要な要素だが、テキトーに変更されることも多い。内容量を製造原価としか考えないからである。

実は、ドロリッチが売時されて数ヶ月後に「どれくらい伸びるか。どう対抗するか」をテーマに調査したことがあった。はっきりしたことは言えないが、結論は「ヒットするが、自社ブランドには影響しない。従って、対抗手段を講じることは無駄な投資になる」だった。担当者はミーツー商品の仕様まで検討していたので結論に不満で、調査内容にクレームをつけ、以後「出禁」に近い状態になってしまった。(担当は結構エライ人だった)

その時は気づかなかったから報告書にも書かなかったが、ドロリッチユーザーの評価の中に「ちょっと量が多い(多すぎる)」との発言が目立った。中には残して捨てることもあるということであった。これはドロリッチの欠点と考えられるが、この多すぎる内容量が食感と味、オケージョンを含めてドロリッチブランドをブランドたらしめていたのではないかと今になって思う。だから、ドロリッチコーヒー飲料ではないし、デザート・スイーツでもない新しいセグメントを形成していた、のであろう。

記事によると当初は220gあった容量が120gまで少なくなったそうである。結果論で言えば容量が半分近くまで減ったらブランディングを最初からやり直す必要が出てくる。サイズバリエーションで対応する手もあっただろうがコンビニの棚を考えたら、売り上げが落ち始めたブランドのサイズバリエーションは無理だったのだろう。多分、売り上げが落ちはじめたので、製造原価を抑えるか値上げをするかの選択だったのだろう。それにしても、220から120はやりすぎである。それだけ内容量を落としたらパッケージも作り変えるはずだから製造原価の合理化は少ないとも思うが、どういう検討がなされたか全く知らないので憶測だけである。

ここ数年、牛乳やヨーグルトで内容量を(黙って)減らすことが行われている。「500のヨーグルト」と呼ばれている商品は400gしかない。500のヨーグルトを一気食いする人は極めて少ないのでブランディングへの影響はない。値上げを避けるためという大義名分も成り立つ。しかし、ドロリッチは1回食べきりのパーソナル商品である。それが容量を変えるとなると消費者にとってはブランドが変わることになる。

ドロリッチのブランドを作っていた要素の中で「チョット多い」は重要なプラス要素だったのではないだろうか。FGIで「チョット多いのよね」の発言を自分たちの都合の良いように(製造原価の合理化)解釈したのではと想像している。飲料や食品の内容量はブランディングの極めて重要な要素である。変更するときは慎重に検討すべきである。

あと、FGIのモデレーションと分析には定量調査のそれよりも客観性が要求されると言うことが言えそうである。最近、(メーカーの)担当者自身がモデレーションをやる場合が多いが、やはり、外部の人間にやらせるべきである。