ニーズ探索から商品企画

新サービスを企画する時、なにか新しい技術やシステムがない限り、生活者のニーズ探索から作業は始まる。「今、この分野であなたが欲しいものは何ですか?」という調査はさすがにしない。現在は満たされていると思われる生活の中の気づかない不満、不足、不安、負担をあぶり出さないといけない。インタビュー調査や行動観察など定性的な方法でアプローチする。これは仮説なき調査になるが、まるっきりなにもないところでインタビューや行動観察しても得られることは少ない。ではどんな仮説が必要かというと帰無仮説ではもちろんないし、検証可能な作業仮説でもない。漠然とした人の生活やそれを囲む社会経済の構造、ひいては心理学進化生物学的な知識が必要だ。その知識が学問的であるよりは実践的に応用できる自由度を持っていればなおよい。

そういった広い仮説を持ってインタビュー、行動観察をを行うと不満・不足・不安・負担感が見えてくる。これらをマーケティング的に記述し、それらを解消するサービス商品を企画していけば良い。ここでハマりやすい落とし穴は商品企画が不満・不足・不安・負担の「解消」を目指してしまうことである。論理的に考えすぎるとこの落とし穴から脱出できず、「おもしろいけどそれほどでもない、わざわざカネ、手間をかけるほどのものではない」ものしか企画できない。つまり、マイナスをゼロの地点まで押し上げ、引っ張り上げても「当たり前」でしかなく、「魅力」を訴求することはできない。

このゼロ地点を突き抜けて圧倒的な楽しさや新しい価値を生み出せないといけない。そうするためにはニーズ探索段階で発見した「不・負」を忘れることも必要である。それらはバネとして利用するだけで商品企画は「不・負」を突き抜けていく必要がある。それができない「不・負」は社会福祉の世界でありマーケティングではない。