対象者人数によるインタビューの深さ

FGIの対象者人数の歴史を振り返ると、FGIが行われ始めたころは1グループ当たり対象者8人が多かった。さすがに多すぎたのであろう、やがて6人が主流になる。その間、グループ内で多数決の決着がつくようにとの理由で、7人の時代もあった。ただ、「業界として」これまでFGIの最適対象者人数は何人かという議論は真剣には行われてこなかった。なかば、慣習として「6人ですよね」で済まされてきている。

私は、12人から3人までのFGIを体験した。12人、10人はグループが形成されず、ひとりひとりが発表するシンポジウムみたいなもの。マーケティング的には「定量調査をやればいいのでは」ということになる。8人はなんとかグループ形成できるが、グループを作ることだけに集中させられてテーマへの突っ込みや深掘りまでモデレーターは気が回らない。

7人、6人からFGIらしくなり、グループ全体の「流れ、動き」がコントロールでき、その流れ、動きに対象者個別がどう関与してるか、影響を受けているか、コントロールできるようになる。ただ、デブリーフィングや分析の時、必ず6人の対象者のうち1人か2人の印象が極めて弱いか全く思い出せないという現象が悩みだった。DVDで振り返った時、休んでいる対象者がいることに気づいた。(最悪、居眠り寸前のことも)観察するとこの対象者の心はグループから外れて話しに全く関心を持っていない様子なのである。授業中にボーっと窓の外を眺めている生徒のよう。いわゆる「謝礼ドロボー、フリーライダー」である。これを防ごうとその対象者を指名したりしているとグループとしての凝集力は確実に下る。

対象者5人のFGIでは6人までのようなフリーライダーによる希薄化がなくなり、グループの凝集力と対象者個別の個性(態度変容)の分析がうまくコントロールできた。その5人のFGIでドタキャンが1人出て4人で実施することになった。この対象者4人がベストの結果になった。その後は、積極的に4人のFGIを勧めている。

さらに3人のFGIをトライした。これはミニグルインとしてインタビュー時間も短縮して「回す」ことが主眼になってくる。定義として3人はグループではあるが、いわゆるグループダイナミックスは発動しずらい。

対象者4人FGI終了後は、・他の対象者の話がよく聞けた(6人のときは何言ってるかわからないときがあった)・自分の意見を言いやすかった(6人だと言おうとしている時に次の話題にいってしまう)などと満足度が高かった。