変化盲と選択盲を前提にしたモデレーション

第17弾は変化盲・選択盲。ヒトの認知や意思決定行動の説明がいかにいい加減かという、昔から言われている変化盲・選択盲。ホテルのフロントで対応するホテルマンがやり取りの途中で男性から女性に入れ替わってもほとんどの人は気づかない。多数の写真の中から、好きな男性(女性)の写真を選んでもらい、しばらく間をおいて、「さっき選んだこの写真(人)のどこが好きなんですか?」と選んだ写真と違う写真を呈示すると、これじゃないと指摘する人は極めて少数で、ほとんどの人が呈示された(違う)写真のよいところを語るそうです。

我々はこの実験をFGIの中でやってみました。画像での実験では、変化盲・選択盲が確かめられました。そこで、コンセプト文でも同様の実験をしたところ、変化盲・選択盲ともに確認できませんでした。文章というコトバそのものでは変化や選択理由に気づきやすい。写真のような全体イメージで把握するものの認知は誤りやすい。との結論です。

FGIのコンセプト比較・選択場面ではモデレーターはこの認知バイアスに敏感であるべきです。P、Q、Rの比較でどれかひとつを選ばせて、選んだ理由を聞く場合、PならPを選んだ対象者の選択を絶対視せずに選択理由を聞くべきです。具体的には「何を選んだかはおいておいて、PQRそれぞれのよい点、良くない点を聞く」ようにします。また、出来上がったコンセプト文を事前に読んだときに変化盲はある程度予測できます。PQRそれぞれの差異が非常に小さかったり、微妙だったりすると対象者はうまく識別できない状況で無理やり意思決定します。コンセプト文を作った人には重大・重要な「変化」であっても対象者にとっては「どうでもよい」こともあるわけです。