マズローの発展5段階説

欲求段階解説のマーケティング的解釈の備忘録

 

1980年代にマズローによって提唱された人間の欲求の発展段階説。

ヒトの成長、発達段階を順を追って解説したもので、生物としての存在からやがては唯一無二の「何か」になろうとする人間の欲求を5段階に分けた。(のちに宗教的ともいえる6段階目を持ち出したそうである)

第一段階は生理的欲求である。

生きていくために最低限必要な食べる、排せつする、眠る欲求でこれのどれかが決定的に不足すると生きていけない。

第二段階は安全欲求である。

環境(天候・気候)や外敵から身を守る欲求である。寒暖・雨風雪から身を守る衣服、住居や野生生物や他(同じ)共同体の人から攻撃を撃退しないと生きていけない。

第三段階は社会欲求・愛の欲求と言われている。

これは関係性欲求と自分は解釈している。群れや家族単位を超えた関係性を持ちたいという欲求である。愛まで行くとキリスト教的価値感が色濃く感じられるので、一人では生きていけない社会的な関係性を持ちたいとの欲求が社会を形成して生きるヒトには必要である。くらいの解釈である。

第四段階は承認欲求である。

これも関係性欲求と解釈できるが、単なるつながりではなく「なくてはならない人」と誰かに認められたいという欲求である。単なるネットワークのノードではなく確かなハブになりたいとの思いと言えるか。Webの発展で誰もがこの承認欲求の地獄を見るようになってしまったのが現在、ともいえる。

第五段階が自己実現欲求である。

普遍的価値、芸術的価値を生みたいという欲求と解釈されるが、もっと一般的に一種の「悟り」かもしれない。諦念的なことは除いて、周囲の価値判断を尊重しつつももそれに流されるだけであくせく行動するようなことがなくなる状態であろう。コンセプチュアルな欲求である。

 

以上の発展段階説をチョコ菓子「キットカット」のマーケティング的解釈に使ってみたい。

第一段階は生理的欲求だが、お菓子で言うと「お菓子としての基本的なスペック」である。素材、製造過程についてそろえなければならない要素である。

第二段階の安全欲求はパッケージングと解釈できる。安全・清潔に崩れることなく消費者の元に届けなくてはいけない。

第三段階と第四段階は一緒に扱って、コミュニケーションにまとめられる。キットカットというネーミング、パッケージデザイン、広告、キャンペーンを含めていわゆる「情報価値」の演出である。これがないと消費者の承認は得られない。後、流通の確保もここに入る。

第五段階がコンセプト、ベネフィットである。第四段階までのマーケティングミックスを差別性のある魅力的なコンセプトに仕上げなくてはいけない。ここまでたどり着けばブランドとして社会的(市場・消費者)に認められる。

 

以上のように一見、切れ味の鈍いように見える発展段階説は、ラダリング分析の時などは、はっきりと意識的に使うべきである。