圧迫プロービング

モデレーションは、出席対象者にリラックスした雰囲気を与え、質問されたことに「すなおに」答えてもらうことに注意して行う。
対象者の発言には、『そうなんですか』、『そうなんだ』と納得も理解も同調も反論もすべて曖昧ながら、『あなたの発言は確かに聞きました』という意味が伝わる便利な日本語を使う。(モデレーターそれぞれこうした便利な用語、あいづちを持っている)

「もう、メリットは使いませんね。なんか恥ずかしい」
『そうなんだ』『じゃ、前はメリット使ってたんだ』
「イヤイヤ、結婚まで一人暮らしだったので去年までメリットでした」「今は、h&sの男用うを使ってます。」
『それは奥さんの勧め?』『奥さんは何を?』
「いや、なんか美容院の高いのを。僕が使うと怒られる」「いまでもシャンプーはビックで自分で買っている」
『そうなんだ』『メリットが恥ずかしいってのはどういうことなの?』
「イヤイヤ、常識でしょ。それ」

男性の頭髪のインタビューでのやり取りで、メリットがテーマでなければ、ここまでプローブして話題を次に持っていくのが普通のプロービングであろう。
ここで、圧迫プローブをしてみる。

『常識って言うけど。そんなこと言ってる人どこにもいないでしょ!』(関西なら『そんなヤツおらへんやろ!』)
と対象者の発言を全否定してみるのである。
「そんなことないよ。みんな言ってるよ」「ねえ?」と他の対象者に同意を求めるだろう。ここで、同意が得られなければ、
「でも、みんな子供の頃はメリットだったよね」「フケ、かゆみに効いたよね」などのフォローの発言があってもこの対象者の発言はひとりの思い込として、分析にも生かされない。(だろう)

圧迫プロービングは、対象者の発言を全否定してみる他に発言の論理的矛盾(矛盾までいかなくてもおかしなところ)を突く方法がある。上記の例で言えば、
『メリットを使うのが恥ずかしいってどういうことですか』『自分で買って、ひとりで使ってワケだから恥ずかしさを感じる場面はないじゃない』とのプローブである。
ここから、単なる発言のレトリックなのか、恥ずかしさの言い換え表現が得られて分析が深まるかが分かれる。
もちろん、後者をねらったプローブである。

圧迫プローブは「奇妙なひとびと」対策にもなる。
クレーマー的奇妙さ
・自分の意見は世の中を代表している的奇妙さ
・他人の発言にとにかく反論したがる奇妙さ
・自分の意見(評価)を持たない奇妙さ
なども圧迫プローブであぶりだせる。

ただ、やり過ぎると対象者の気分を害し、グループの雰囲気も悪くなるリスクが大きくなる。
奇妙な対象者対策の時は、途中で排除する(帰ってもらう)覚悟がモデレーター側に必要である。
そのために、バックルームのクライアントの了解が必要である。

アクティブインタビューでは、圧迫プローブも取り入れて行きたい。