あまりきつく縛らない

品質管理の思想は「設定した基準に満たない不完全なものは捨てる。採用しない」ということであろう。
統計データでもこの考えが強く、不完全なデータ、欠測値を含むデータは採用しないのが普通である。
データ量が極めて少ない場合は、欠測値を既知データから推測して集計に加えるなどの処理をすることもあるが、大量にデータがある場合は捨てる。

この考えを定性データにも採用しよとすると思わぬ損をすることがある。
最近、体験した実例。
グループインタビューで必ず、自分の携帯を持参してくれという条件でリクルーティングした。
ところが、当日、ひとりの対象者が忘れてきてしまった。
ここで「基準に満たない対象者」として、お引き取り願うか、目をつむって参加させるかの判断が必要だ。
今回は、目をつむって参加してもらった。

そしたら、この対象者が「どうして携帯を忘れたか」を語ったことから、思わぬ新しい機能の発想(アイディア、インサイト)を得た人がいて、参加させて大成功だった。

ネットリサーチモニターを使ったリクルーティングが多くなったせいかもしれないが、インタビュールームの入り口での本人確認が厳しくなっている。
今回の体験で、設定した条件に合致しているかのチェックを厳しくしすぎるとインタビューでの多様性が失われる危険にわれわれはもっと敏感であってもいいのではないか。と思った。

あまりきつく縛らず、逃げ出されても仕方ないと考えて「ゆるく縛る」覚悟が必要かもしれない。
今回も予備サンプルまでリクルーティングしてあれば、当然引き取ってもらうことになったであろう。
アリバイ工作のための予備サンプルはもったいないと思う。