アクティブインタビューの「場」

場の理論というと宇宙物理学を思い起こすが、社会学にも「場の理論」というのがある。
個人や集団の行動は、その個性・特性だけでなく、それがおかれた立場や環境によっても影響される。という内容である。
理論というほどのこともないが、そう言うらしい。
色川大吉ベンヤミンにもそれぞれの「場の理論」のような見解があった気がする。
色川の場合は、秩父困民党の行動様式は秩父という土地(地形や風土)に影響されたと説明できるものがあるということだったし、ベンヤミンで憶えているのは「忘れえぬ、行きたくなる地名」というような内容だけで、場の理論とは程遠い。
で、調査に関して「場の理論」を考えてみたい。

市場調査に限らず、データはそれが発生している現場で採取するのが最もよいという前提は認められると思う。
消費者調査データは、消費者がデータ源であるから消費者に最も近い面接調査が有利ということになる。
ただ、面接調査にしても消費者がデータを生成している現場からは遠い。
消費者がデータを生成している「場」は、面接場面ではなく、買い物したり、テレビみたり、インターネットしていたり、食べたり・飲んだりしている生活場面である。
ところがインタビュー調査は、インタビュールームという「場」で行われることがほとんどで、対象者の生活場面から遠く離れた「よそゆき」の場である。
そんな離れた場所からはよいデータは得られないということで、ホームビジットや店頭同行面接が行われる。
それを徹底すれば、行動観察、エスノグラフィー(参与観察)となる。

我々が目指しているアクティブインタビューは、対象者の生活現場を訪問する手間を省いて、できる限り現場感覚をインタビュールームで持ってもらうことをめざしている。
その方法として、
? 生活現場の写真を持参してもらう
? インタビュー中に近所のスーパーで買い物してもらう。
? 調理してもらう、食べてもらう(試食・試飲目的ではなく、行動観察)
? インタビュー中に自由に動き回ってもらう
などを試行している。

究極は、対象者に寸劇を作って演技してもらうことである。