犬にココロを読まれる

岩波科学ライブラリー199『犬のココロを読む』と青土社『仔犬に脳を盗まれた!』を続けて読んだ。
たまたま犬関係が続いただけだが、確かに犬がどうしてこれほど人間と仲良くなったのか不思議である。
猫も仲良しだが犬ほど「人間的」な付き合い方はしていないようである。

上記2冊では圧倒的に前者の方がおもしろく、読みやすく、知識が豊かになる。
サブタイトルに「伴侶動物学からわかること」とあったが、伴侶動物学なんてものがほんとにあるのだろうか。
とにかく伴侶とまで言われる動物は犬しかいない。
本の中では、犬の祖先はオオカミに確定しているとのこと(コンラート・ローレンツの時代はオオカミかジャッカルかで論争もあったらしいが、ミトコンドリアDNAの分析からからだからオオカミに間違いなし)
ふつうは、獰猛なオオカミをヒトが飼い馴らしたと考えそうだが、実はオオカミの方に突然変異が起こっておとなしい(人懐こい)亜種ができ、それが人間社会に向こうから近づいてきたというのが定説になりつつあるとのこと。「人イヌにあう」(ローレンツ)ではなくイヌが人に会いに来たのだから、主導権はイヌにあったのかもしれない。
3万年前くらい前から犬と共生を始めた現生人類だが、そのころ絶滅したネアンデルタール人は犬と共生しなかったことが絶滅のひとつの理由かもしれないらしい。(犬の優秀な嗅覚を狩りや敵襲の警報に役立てられなかった)

犬と人間の共生が可能になったポイントとして「共同注視」が挙げられていた。
共同注視とはある人の視線の先を追って行って、その人と同じ目的物を見るということである。
狩りや戦争のときは非常に有利に働く機能である。
これを可能にしたのが白目と黒目がはっきりと分かれた目の構造で、こういった構造を持っている種は極めて少ないらしい。(もちろんオオカミは少ない部類に入っている)
たしかチンパンジーのアイちゃんのオトーサンの松沢さんもサルの中でもチンパンジーだけが母子で見つめ合うという行動をすると言っていた記憶が。
共同注視、見つめあいは人間と犬との間には確かにある。(ネコにはない?)

犬と人との共生は人が犬に対して一方的に働きかけたのではなく双方向性が強いもので、犬に飼い馴らされた人という部分も大きいようである。
著者は「収斂進化」とまで言っている。

あと、面白かったのはイヌは人や仲間(犬)の遺伝子的臭いを嗅ぎ分けて弁別しているらしい。ということ。
だから双子は弁別できない。
もうひとつ腸内細菌叢の臭いの違いも弁別に使っているらしいとのこと。
(同じミルクを飲んでいる赤ん坊は弁別できない)

今後、研究が進めば、犬とヒトの関係はますますおもしろくなりそう。
我が家の18歳の老犬は観察していても寝てばかりで役に立たないが。