サンプルからスウォームへ

マーケティングリサーチの対象者を考えた時、おおよそ以下のように分類できそうである。

サンプルの時代     野生状態
モニターの時代     放牧の始まり
コミュニティの時代   飼育方法の研究
スウォームの未来    野生を野生のまま扱う

サンプルの時代とは標本抽出理論が確立して母集団全体を調査しなくても少数のサンプルを無作為抽出することで、母集団全体を推計できると確信した時代である。
母集団全てを調査することは時間的、費用的に不可能だった。

モニターの時代はネットリサーチによってもたらされた。
対象者を大枠の囲い(リサーチモニター)の中に放牧しておいて、必要に応じて小屋の中に招きいれて調べるという方法が採用された。
これによって、野生のままに置かれた広い母集団から無作為にサンプルを取り出す(狩る、釣る)手間が無くなり、時間的・費用的には大いに合理化された。
放牧地に入れられたら野性は無くなる(母集団を反映しない)との非難も経済合理性にはかなわず「大数の法則」でちょこっと理論武装しただけで大放牧地が野生を侵食し尽くした。

コミュニティの時代は文化人類学的発想で参与観察の方法論を採用した。
参与観察は時間がかかり、方法論が曖昧だったためリサーチ全体では「日陰モノ」的位置づけだった。
日陰には日陰にしかない(一種、背徳の)魅力があったため、それなりに重宝されていた。
そこにインターネットによるコミュニティが生まれた。
このコミュニティは距離と時間をある程度無視できたため、従来のコミュニティよりも目的合理的に恣意的に形成することができた。
このコミュニティを参与観察することで野生や放牧の時代とは違った知見が得られるようになった。

インターネットというネットワークは巨大化し、野生状態で生活する人々を狩ったり、釣ったりすることもなく、野生のまま捉えることを可能にした。
母集団の姿がリアルタイムで過不足なく捉えられるようになったといえる状況に限りなく近づいたのである。
母集団をスウォームとして捉えシュミレーション技術(スパコンパワー)を使って「群知能」の分析さえ可能にしようとしている。
いまのところ、ビッグデータと呼ばれてエンジニアたちのオモチャの域を出ていないようだが近い将来「スウォーム」として登場してくる。
ような気がしている、今日この頃。