ベッドに合わせて足を切る

油谷遵『マーケティングサイコロジー』p113〜116
で、p116に「プロクラステスの寝台」が出てくる。

優秀なマーケターでもことインタビューの現場に出てくるとこの「プロクラステスの寝台」の罠にはまることが多い。
対象者の個性を殺し、標準や平均を求めたがる。
モデレーターとしては、これはと思う対象者に思いきりしゃべらせたいのだがそうもいかず、長い足をもつ対象者者は切り、短い足の人は引き延ばすという無駄な努力をせざるを得ない。
時間と費用とテーマで大きな制約を持っているマーケティングインタビューだから仕方ない。

この本で油谷さんが書いているように自然状態での集団の発言数の分布は指数分布に近い分布型になる。
6人のグループであれば、一番よくしゃべる対象者1人が全体の6割くらいを占め、最も発言数の少ない対象者は1割にも満たない。
いわゆる「謝礼ドロボー」の出現である。
お金を払う側にとっては許しがたいかもしれないが「自然な会話」はそういうことが多いのではないか。

もうひとつ、グループ全体の発言のうちテーマに関する発言(分析に使える発言)の4倍程度の無駄な発言があるという記述がある。
冗長性が人の会話の特徴だから当然だが、寝台に合わせて足を切りたがる人はこの区別がついていないのだろう。
真実を「ひとこと」で言い表す人がいる一方、風が吹いたら桶屋が儲かるまで延々とおしゃべりする人もいるのが世の中。
その世の中(市場)をわかろうとするのがリサーチなのだから、やはり、足に合わせて寝台を調整するより仕方ない。

*その点、定量調査は質問文やデータクリーニングで足切をしているのでプロクラステスが登場することが
 少ない。