マーケティングインサイト

30年以上前に読んだ記事を記憶だけで書いてみる。

ネスレだったかゼネラルフーズだったか忘れたが、インスタントコーヒー(IC)を発売した当時、ターゲットは忙しいワーキングマザー(当時は共稼ぎ主婦と言った)とし、朝のあわただしい時間帯でもきちんとダンナにコーヒーを出せる。というベネフィットを訴求した。(当時、まだ公式には妻は夫より早く起きてコーヒーを出すものという通念があった)
「お湯を注ぐだけで本物のコーヒーの味わいと香り」というようなコピーであったと思う。
ところが販売データを見るとワーキングマザーは相変わらずRCを買い、ICを買っているのは専業主婦であった。

いろいろ分析した結果、
・専業主婦はグータラ(もっと品のよい表現だった)だからICに飛びついた。
・一方、ワーキングマザーは「手抜き」の印象が強いICに躊躇した。
・朝の主婦の行動観察(すでにエスノグラフィー)からはワーキングマザーは短時間に専業主婦以上の業務をこなしていた。
ということがわかった。

ここから、ICのベネフィット訴求を
・朝のあわただしい時間帯でもきちんとダンナにコーヒーを出せる。
から、
・合理的に時間を使う賢い主婦のためのIC
という内容に変更し、これによってICは市場に定着した。

記事は、コミュニケーションをターゲットの「深層心理」にフィットさせることでマーケティング的な成功をおさめた。というような結論になっていたと記憶する。
今なら、「合理的に時間を使う賢い主婦」がICのインサイトであって、「お湯を注ぐだけで本物のコーヒーの味わいと香り」はICの機能に過ぎない。
ということになろう。

マーケティングインサイトと新しい意匠に包んだところで、昔からある概念である。
もっとも、さまざまな新しい意匠を提起し続けるのがマーケティングともいえる。