墓はあるの?

通っている歯医者の先生、同い年で福島はいわきの出身。
名門の出らしく、墓も広いらしい、父親の造った五輪の塔が震災で倒れ、菩提寺にやっとのこと頼み込んで修理のダンドリがついたとのこと。
本人夫婦も子供たちも全員、東京に出てしまっているので家は建てて10年くらいなのに数年前解体して更地にしたらしい。
残るは墓で、いわきに置いていては「誰もお参りに来てくれないから」東京に移そうかと思っているが、これがなかなか大変で宗派替えも考えているそうだ。
そこで出てきた質問が「石井さんは墓はあるの?」である。
この年齢になると「死」は身近なことになってくるが、墓は遠いままだった。
死後の世界まで考えていることに驚くとともに自分は相当うかつだったかもしれないと思ったせいか「あまり、そういうことは得意じゃないんでね」とわけのわからん返答になってしまった。

自分は「死ねば死に切り」で後には何も残らんという考えが基本である。
臨死体験や神話などの本は何冊か読んでみたが「死にきり」の思いは変わらないでいる。
ゴッホだったか弟のテオだったか「生者ある限り死者は生きん」と言っていたが、こちらはそれほどの孤独感を体験していない。(孤独ではあるが)

ここで歯医者さんの話にもどって、
・墓を作っておかないと墓参りは成立しない
・近くに墓がないと墓参りの頻度は減る
ことはわかるが、
・墓参りに誰も来なかったら「さみしい」と感じるか? 誰が?
ということがわからない。

墓も葬式も故人ではなく生きている人たちのためにある。