家族の勝手でしょ!

岩村暢子さんの「変わる食卓、変わる家族」の続編である。
今回は「写真=事実」の提示だけで価値判断(コメント)は極力避けているようであるが、見つめる視線は固定されている。若い母親によって、食卓が乱れ、それが子供に影響し、男達の知らないところで日本の家庭は崩壊して行っている。さらには日本の社会まで?、といった視点である。
前回までの本の内容に対する批判として「特殊な例だけ取り上げている」「現物を見せてもらわないと信じられない」があったようで、それに対して証拠写真の提出という位置づけになるようである。

戦後の高度成長とその後の失われた20年で、古き良き日本の伝統、礼儀作法が失われていっているという論調は常にある。「近頃の若い者は!」という年配者の嘆きににているだろう。
こういったとき、いつも疑問に思うのは「基準」はどこにあるか、という点である。
この本でも、お菓子化する食事、消えるみそ汁、食器化する調理器具、加工食品尽くし、子供リクエストで子供が粗食、「疲れる」主婦達、バラバラ食から「勝手食い」へ、フレックスの家族一緒、と刺激的なタイトルが並んでいる。
これらの批判?に対抗できる日本の食卓はいつ、どこに存在したのだろうか。
おそらくはサザエさんやちびまるこちゃんの中にしかないのかもしれない。

我々も主婦をインタビューしていて「大丈夫か?」「どうなるんだ?」と思うことは時々あるが、よくよく聞いていくとやはり、家庭や家族に対する彼女たちなりの思いは感じられる。
彼女たちの思いの表れのひとつがこの本にある食卓写真であるが、改めて観察しても岩本さんのようなコメントは出てこなかった。
崩壊過程(家庭)ではなく、新たな築き(気づき)を期待したい。
リサーチの手法としても「観察調査」(エスノグラフィー)の可能性を秘めているので、彼女たちの食卓(家庭)を見知らぬ集団・社会として、その参与観察から新しい文化の解釈ができるのではないだろうか。

次回に期待したい。