ビジネス・エスノグラフィ

JMAからセミナーの案内。活用事例研究セミナーとある。
ビジネス・エスノグラフィーを「仮説検証の市場調査に対して『観察を通じた仮説構築』を重視する」ことで「現実性の高いアイディアを導く」(手法)としています。
博報堂富士通がコディネーターとなって、花王コニカミノルタ行動観察研究所、リコー、アキレス、富士ゼロックスなどが事例発表をするようです。

昨年のアウラセミナーでエスノグラフィーを取り上げて、
? 文化人類学社会学での本来的なエスノグラフィーは「参与観察」という方法論の特性がある。
? 参与観察は、対象集団と生活を共にするというハードなフィールドワークである。
? もうひとつの特性は『恥知らずな折衷主義』(佐藤郁哉)と言われるデータの帰納的、社会文化的解釈である。
ということから、そのままマーケティングやリサーチに適用できる方法論ではないと結論した。

ただ、方法論として、
? 対象の現場の行動を「観察する」
? 対象から言語(コトバ)以外のデータを収集する(ビジュアル、イメージ、メタファー)
の2点は有効であろうと考えた。
そして、この2つの要素のどちらかがあれば、マーケティング上は「エスノグラフィー」といえるのではないかと考えた。

行動観察という調査手法はだいぶ昔からあり、たぶん、グループインタビューより古い方法論である。
ここでエスノグラフィーというからには単なる行動観察に「参与観察的」要素が必要である。
本来的参与観察は、調査対象と生活を共にするものだが、これは相当の覚悟(目的、予算、日程、関係調整)がないと実施できない。
単純な行動観察とエスノグラフィックな行動観察の違いに観察者が対象にどれだけ「参与」できるか、つまり、対象の意識の中にどこまで入り込めるか、棲み込めるか、がポイントになると考えた。

もうひとつの言語以外のデータを使って調査するということも昔から行われている。フォトエッセイ、フォトソート、コラージュなどは多くのリサーチャーが経験している。
では、エスノグラフィックなビジュアルの使い方とは何かというと、調査対象にビジュアル・イメージで「考えてもらう」ということになりそうである。写真や絵にどう反応するかではなく、写真や絵を使って「思考」してもらうことである。言い換えればメタファーの連鎖を生み出してもらい言語では表現できないイメージを作ってもらうことである。

最後は、そういった対象のイメージ世界を言語表現に落とし込む(分析・報告書)ことになるが、それこそがエスノグラフィックマーケティングリサーチのリサチャーの仕事になる。