システム

つい先日の日経本誌に載っていたマグネシウムでヴァイオリンを作るという匠のワザ。この会社は新幹線の先頭部分をハンマーでたたき出す技術で有名らしい。工業化の最先端で人間の感覚が機械よりも精度が高い仕事する。
この匠による日本のモノ作りがこの不況脱出のキーかと思っていたらそうでもないらしい。

ものつくり敗戦―「匠の呪縛」が日本を衰退させる (日経プレミアシリーズ)ものつくり敗戦―「匠の呪縛」が日本を衰退させる (日経プレミアシリーズ)
(2009/03)
木村 英紀

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日本は労働集約型の工業化だった(優秀な労働者がたくさんいた)ので、こういった部分的な技術は極限まで発展した。この優秀な匠たちは高度な機械も道具として使いこなし、機械さえも「道具」として扱ったのが日本だと著者はいう。(機械フェチ)
60年前の戦争は将校がバカで現場の兵隊は優秀だったと言われているが、技術者、工学者も兵隊(現場)発想だけで全体システムを考えていなかったらしい。
戦艦大和は作れても海軍全体の用船システムは司令部も技術者も考えていなかった。典型が戦艦大和の速度で、設計自体が航空母艦より10ノット以上遅く、船団として戦闘することは考えられていなかったということである。

この欠陥は戦後も生き残ってしまい、今でも「理論」と「システム」と「ソフトウエア」が日本の技術者はヘタ(苦手)だという。この欠陥がある限り、マンハッタン計画、アポロ計画、MPU(インテル)、OS(マイクロソフト)、検索(グーグル)などの「ものつくり」は日本ではできない。となる。
正しい例かはわからないが、機械式の時計の発想をやがて計算機(コンピューター)に発展させた欧米の思考経路に対して日本はからくり人形という工芸・芸術に高めてしまったという対比が語られていた。

21世紀も10年経過、グローバル化が進む中で「友愛」でウチに固まろうとする民主党、相変わらず戦後体制を引きずる自民党、自動車・家電というものつくりでは成功した産業界。ただ、ここまではものつくりでは「神話」になってしまった。この劇的な不況の中、これからあたらしい「もの(コト)つくり」を日本全体がめざさないと極東の小島にひっそりと生きることになる。(らしい)

それも悪くない選択と思うのは自分が歳をとったせいか。