忘れえぬ女

この絵があるトレチャコフ美術館の収蔵品の目玉はイコンだそうです。
それはそれとして、この絵のストーリーを考えて見ます。

・ロシア貴族の生意気な娘が、もっと位が高いハンサムな貴族の青年にふられた帰りに、ガラのわるいコジキに冷やかされて、怒ってにらみつけた。
・革命軍(反乱軍)が迫ってきたモスクワから逃げる途中、世話になった乳母に挨拶にきて、自分と乳母の行く末を思い悲しくなった。
・春がきたと浮かれて馬車で遠出したが、意外に寒くて思わず涙が出た。
・執筆に疲れたトルストイが散歩中、視線を感じて見上げたら、忘れえぬ美貌の女性が哀しい視線を送ってきた。
・チェホフの子犬を連れた貴婦人のモデル。ということは不倫の帰り。

他にもいろいろ妄想はふくらみますが、この絵を「コカコーラをイメージするもの」として持ってきた対象者が上のようなストーリーを語ったとして、リサーチャーはどう解釈するでしょうか。
これが、われわれが目指しているメタファー分析なのですが。
最初のストーリーのメタファーは「蔑み」、次は「没落」、「勘違い」「思い込み」「かなえられない望み」といったところでしょうか。

改めて「メタファー分析」と名乗る必要もないかな。

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ここで、コカコーラのイメージを何もないところで語ってもらったらどんなコトバ、表現が出てくるか考えるとこの方法の利点が見えてきます。
わずかな連動性を感じてこの絵がコークを表しているとした対象者が、絵のストーリーを紡ぎ出すことで深層にあったメタファーが浮かび上がってくると考えるのです。
レイコフのいう概念メタファーより「深い」かもしれません。